超・脱力☆ヴァイオリンの構え方〜ジェレミーとのレッスンから(2013/05/31 BodyChance目黒)

Violin上達しよう

ジェレミー板書「活動のプラン」と、それ以前に大事な「協調作用のプラン」

 超脱力できるヴァイオリンの構え方をレッスンしてもらいました!

 いま理解しているそのままを書いてみますね。実は今日、僕がいまアレクサンダーテクニークを学ぶために通っているBodyChanceというスタジオの校長であるジェレミーのレッスンを受けてきたんです。面白かった!

ヴァイオリンの位置をどうするか決める
例えば、2つのどちらかを選ぶ「位置を変えてもいい/保持し続ける」
ヴァイオリンに自分全部がついていく
自分全部が動くことで、ヴァイオリンに向かっていく(ヴァイオリンを動かすんじゃなくて、自分を動かしてヴァイオリンのほうへ行く……どういうこと!?)
ヴァイオリンの軌道を描く
ヴァイオリンが動いたときに輪郭が描く軌道を思う
ヴァイオリンは鎖骨に乗るだけ
ヴァイオリンは、ただ鎖骨に乗るだけ。何も加える必要がない。

 要点はこれだけです。詳しいことは、レッスンの流れを振り返りつつ解説を進めていくことにしましょう。


ヴァイオリンの位置をどうすればいいのか?

レッスン開始の合言葉「今日は何を探求しますか?」

 レッスンの最初に、僕は次のようなことを訴えました。

左手のポジション移動の時に、楽器の位置が変わってしまうことについて、どう対処しようか悩んでいる

ジェレミーの反問「それの何が問題なの?」

 ジェレミーはアレクサンダーテクニーク教師ですが、ヴァイオリン演奏の教師ではありません。ですから、彼は次のようにいました。

ヴァイオリンの演奏中にヴァイオリンの位置が変わることって、
歓迎すべきことなの?
それとも、回避すべきことなの?

僕はヴァイオリン演奏の専門家ではないんだから、アドバイスするには、それを知る必要がある。

ジェレミーの提案「どっちかを試そう!」

 ちょっと考え込んでしまった僕を見て、ジェレミーは即座に提案しました。

次の2つのプランからどちらかを選んでやってみることにしない?
ひとつは「楽器の位置は変わっていい」
もうひとつは「楽器の位置を保ち続ける」

 ジェレミーは、僕の人生よりも長い時間をアレクサンダーテクニーク教師として経験を積んできています。そのなかで、数多くのヴァイオリニストも含んだ音楽家に対してレッスンをしてきています。その経験の積み重ねのなかから、浮かんでくるアイデアにはいつも驚かされます。

選択するのは自分だ!

 探求の旅路プランを2つ、ジェレミーが旅行代理店として提案してくれました。どちらかを選ぶのは僕の仕事です。旅行プランの選択まで任せちゃったら、ちょっと退屈になりますよね。

 僕は後者を選択しました。つまり「楽器の位置を保ち続ける」というプランです。このプランを実際に自分に言い聞かせるときに改造しました。それは次のような言葉です。

「楽器と自分の位置関係を、意識的に作りつづける」

試してみてわかったこと

 ひとつ、あまりにも当たり前なことを思い出しました。《ヴァイオリンの位置は演奏中、変わり続ける》ということです。それは、カラダとヴァイオリンを触れ合わせているために、カラダが動けばその関係性は変わるものだということです。

 そして、自分自身のカラダの状態や、周囲の環境に気付くことができました。手に汗をかいていたり、チューニングが狂っていることだったり、梅雨入りしていて部屋にはエアコンが効いていること、クラスメートのひとりひとりが僕を観察している様子も飛び込んできていました。

いよいよ本題、動きの探求

 ここまでは「どう探求しようか」という下準備でした。ここからが、本当の探求です。ヴァイオリンの演奏動作をするときに、自分に何を言い聞かせたら良いのかというプランを練りあげていく過程です。

動かす対象物を知る〜「なんじゃこりゃ?」

 自分が何を動かそうとしているのか。よくよく知りもせずに、ただ動かしてしまうこともできます。しかし、質のよい動きをするためには、対象物から情報を集める必要があります。

 どう情報収集するか。簡単です。ヴァイオリンをもう手に持っているのですから、まずは見てみます。どれだけの大きさがあって、重さがどれほどのものか、手触りはどうか、どれくらいの弾力性があるのか、内部構造はどうなっているのか……などなど言葉に書くとまどろっこしいですね。実際には、こうしたこと……自分のこれまでの経験や知識……というのは一瞬で呼び起こされます。

動きの軌跡を思う〜「望んだことが起きるためには、こいつがどう動けばいいのかな?」

 ヴァイオリンを構えるために、ヴァイオリンを動かします。ヴァイオリンを動かすためには、自分に何と言い聞かせるのか、を思い描きます。

 ヴァイオリンの輪郭がありますね。ヴァイオリンが動いたとき……ぼくがヴァイオリンを動かしたとき……その輪郭全部じゃなくてもいい、スクロールの先端・エンドピンの突起という2つだけでもいいので、それらがどのような軌道を描くかを思い描きます。それをなぞるようにヴァイオリンを動かすのです。

動きの終着点〜ただ鎖骨に乗せるだけ

 ヴァイオリンを動かして、ただ鎖骨に乗せるだけです。押し付ける必要はないんです。この時点ではあご当てに頭をのせる理由もありませんので、頭はただ脊椎の上にあって、自由に動けるだけでいいのです。

超脱力!これが仕上げのアイデア

 ここまででも、相当な脱力レベルに達してしまいました。しかし、ジェレミーがもう一つ教えてくれました。それが……

「ヴァイオリンに自分全部がついていく」

 ヴァイオリン演奏に必要な動作をするために、自分のあらゆる可動性を動員するという意味です。他の人から見た場合には、僕自身がヴァイオリンを動かしているように見えます。しかし、僕がやったのは、そうではないんです。ヴァイオリンを演奏するために自分が形を変えるのです。おかしな言い方に聞こえるかも知れませんが、《ヴァイオリンが僕の形を作った》とも言えます。

 ここで、ちょっと実験してみましょう。僕はヴァイオリンを手にして、その手を垂らして立っています。そして、そのヴァイオリンの裏板には自分の鎖骨を持って行きます。するとどうなるでしょうか?

 ヴァイオリンの方が僕よりも軽いので結果的には、僕は立ったままでバイオリンのほうが僕に動かされて行きます。そして、僕は鎖骨にヴァイオリンただ乗せることができます。

 押し付ける力は全く要りません。そして、あごあてにあごを触れされるために第1頚椎の下面がつるりと回って、鼻先を下げるようなつもりで顔をわずかにうなづくと、構えのできあがり。腕を持ち上げるときに起きていた動きが消えました。

何が変わったか

痛みを作っていた動きが消えた

 僕の古い習慣的な動きでは、左腕(肩甲骨など)が背中を縮めてしまいつつ、鎖骨などを前方に押し出していました。右腕はバランスの変化に対応したり、左腕から背中にまで及んだ影響がありました。それが上半身だけでなく、股関節周辺の緊張さえも生み出していたことに今は気づくことができます。

 今までに時折発生していた、脇腹や肩甲骨の深部に感じていた痛みは、これらの《構えるときの、相反する関係性》に起因していたのでしょう。この痛みを再現したければ『鎖骨を前に上に、肩甲骨を後ろに下に』と自分に言えば再現できます。

 でも、そんなことはしたくありません。そこで、先ほど探求の過程で創り上げた新しい言い方の出番なのです。

新しい《自分への言い方》

 新しい《自分への言い方》のひとつがこれです。

頭が動けて、自分全部がついてきて……
そのおかげでヴァイオリンの輪郭が描く軌道を思う……
そのおかげでヴァイオリンに自分全部がついていって……
そのおかげでヴァイオリンをただ鎖骨に乗せて……
そのおかげで自分とヴァイオリンの関係を作って……
そのおかげで自分がやりたい音楽を奏でることができる!

 これで、単なる脱力を超えて、いつでも好きなだけチカラを取り出せるフォームの出来上がりです。

おさらい

 では最後に、おさらいしておきましょう。

ヴァイオリンの位置をどうするか決める
例えば、2つのどちらかを選ぶ「位置を変えてもいい/保持し続ける」
ヴァイオリンに自分全部がついていく
自分全部が動くことで、ヴァイオリンに向かっていく。自分を動かすんだけど、自分よりもヴァイオリンのほうが軽いから、結果的にはヴァイオリンのほうが動くことになる。
ヴァイオリンの軌道を描く
ヴァイオリンが動いたときに輪郭が描く軌道を思う
ヴァイオリンは鎖骨に乗るだけ
ヴァイオリンは、ただ鎖骨に乗るだけ。何も加える必要がない。

おまけの大事なこと「協調作用のプラン」

 冒頭の写真で紹介したことには意味があります。やりたい活動のためのプラン「ヴァイオリンをひくために、これをしよう」ということがありますね。じつはそれ以前に大事なプランがあって「協調作用のプラン」です。

 自分自身がやりたい事をやりやすくするために、全身の協調機能を生かせるようにしよう、ということです。その《協調作用》をうまく働かせることで、やりたいことが恐ろしいほど簡単にできるようになっちゃうんですね。

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