先日、エキストラで出演するオーケストラのパート練習に参加してきました。メンバーの求めに応じて、即席でレッスンをすることになりました。その内容をご紹介します。
取り上げた曲目は、『ペール・ギュント』から「アニトラの踊り」と「朝」、『マイスタージンガー』第1幕への前奏曲、そして、秘密のアンコール曲。全部で1時間40分ほどのレッスンとなりました。
はじめは情報収集
まずは、簡単にメンバーの自己紹介から……お名前、どこの学部で、何年生なのか、バイオリンの経験をはじめとして、いま何に対してどんな関心を持って取り組んでいるのかを、会話の中で教えてもらうことができました。
普段のパート練習をどうやっているかをお聞きしました。これは、左手指の基本形や、ポジション移動の練習をしているとのこと。後ほどお手並み拝見することにしました。
そして、指揮者から指摘されていること、改善課題としていわれていることをたずねました。これは「ボウイング」とのこと。具体的に、曲中のどこでどんな指摘だったかを教えてもらいました。これは、どうやら長い音での表現の仕方に注文がついたようです。
最後に、今回の演奏会に向けて、いま一番やばい曲どれかを聞いてみました。「ペール・ギュント」全員一致!たしかに大変かもしれないです。
基礎練習!
チューニング
この日は、部屋の都合で、複数のパートが同じ部屋でパート練習をしていました。チューニングもままならないくらいの、劣悪な環境と言えます。メンバーは各自で事前にチューニングを済ませていました。開放弦を演奏してもらって、「聞こえにくいだろうけど、隣の人の音を聞いてみよう」と呼びかけてみました。ただこれだけのことですが、何も呼びかけないで演奏したのとは違った響きになるんですよね。不思議なものです。
脳トレ基礎編〜全弓を使って開放弦を演奏する
開放弦の演奏トレーニングをしました。弓の元から先まで、全部を使って。
初めはゆっくり4拍でダウン、4拍でアップ。次には2拍でダウン・2拍でアップ。1拍でダウン・1拍でアップ。そして、0.5拍(8分音符)でダウン・0.5拍でアップ……という具合に、次第に音を短くしていき、弓のスピードを速めていく練習です。
速めていって、あるところまで速めたなら、今度は逆に、音は長く、弓のスピードは緩めていきます。
ポイント1. 変な音が出てもいい
駒からの距離を一定に保とうとする必要はありません。駒の上をこすったり、指板の方をこすったり、弓があちこちに暴走してもいいんです。この練習の目的は《弓の動きをつくるための、腕の動き》を身につけることであり、どんな音が出るかはチェックしなくてよいからです。
ポイント2. 肘の動き
速い運弓がうまくいかないときには、まず弓を持たずに次のことを試してみるといいです。弓を持たずに、ボウイングのまねをゆっくりと。肘を折り畳むのはどこまでできるか・広げる動きはどれだけできるか。
体格にもよりますが、肘をひろげ始めたら、手を身体のヨコ方向に運ぶのではなく、前方向に差し出すようにすることが必要になってきます。手の描く軌道が丸くなってしまうときには、腕のどこかを固めてボウイングしていることが原因です。鎖骨や肩甲骨、肘だけでなく手首や指も、動いてかまわないものですから、弓の動きがなめらかでいられる程度に、これらの関節が動きまわるのを許しましょう。とても大事なポイントです。
ポイント3. 《命令セット》の作りかたを覚える
弓を動かすときの命令の仕方の問題で、ゆっくりの時は「ダウン!」「アップ!」という命令を1回ずつ発令しても間に合います。速く細かい動きの時には、いくつかの命令をひとまとめにした《命令セット》を作って使えるようにしておくと落ち着いて処理できます。
たとえば、8分音符4つをひくのに
*1回ずつの命令だと……
「ダウン!」(ダウンで8分音符を演奏)
「アップ!」(アップで8分音符を演奏)
「ダウン!」(ダウンで演奏)
「アップ!」(アップで演奏)
という4回の命令が必要です。
ここで、「チョップ!」という命令セットを新しく作ってみました。「チョップ!」は、2つの音を「ダウン!」と「アップ!」で連続して演奏する命令です。
8分音符4つをひくのに
*命令セット「チョップ!」を使うと……
「チョップ!」
(ダウンで8分音符を演奏)
(アップで8分音符を演奏)
「チョップ!」
(ダウンで8分音符を演奏)
(アップで8分音符を演奏)
という2回の命令で演奏できます。
命令の回数が少ないので、他のことを考える余裕ができてきます。
実際には、チョップの速さや強さも考える必要があるんですが、「弓の動き」を「腕を伸ばす」「腕をたたむ」という2つに分けて考えるのでなく「チョップ!」というひとつの動作の流れとしてまとめるというのが、ここでのポイントです。
思ったよりも長くなってきました。基礎編はもうちょっとあるので、また後日かきましょう。