バイオリン応援団にようこそ!
バイオリン応援団はあなたを全力で応援しますよ!
「もうやめようかな…」
「うまくならないよ…」
つらい気持ち、悲しい気持ちに寄り添います…。
さて、今回は《うまくなるために、罠からぬけよう》です。
私が、「うまくなったねー」と言われるようになったある出来事のことを書きましょう。
大学オケでコンサートマスターを務めることになりました。
次から次へと、大学の行事にかり出されます。
自分の練習、している暇がありません。
なにしろ、合奏が終わると、
「バイトがあるんで、これにて」
と、誰よりも早く帰っていました。
そのバイトは、夕方から深夜に及びました。練習するヒマなんてありませんでした。
いつ練習していたのでしょうか?
それは、人に教えるとき、
そして、合奏練習のときでした。
学生オケでコンサートマスターをやっていると、
「先輩、いっしょに練習してください」と後輩にせがまれたり、
「コンマスにお手本を見せてもらおう」と指揮者に突っ込まれたり。
冷や汗をかく場面がいっぱいありました。
もう、本番以上に緊張ですよ。身内だし、自分1人で弾いてるのを、全員が聞いてるわけですよ。
「うちのコンマス、ちゃんと弾いてんのか?」
「バイトばっかりで、練習してねーだろ」
みたいな、冷ややかな視線を感じつつ。
すいません。脱線しました!
うまくなりたい!
という人たちが、陥りがちな罠とはなにか。
それは、
楽してお金儲けしたい!
という人たちが陥りがちな罠に似ています。
こうすればうまくなる。
こうすれば儲かる。
という情報を集める、コレクターになって満足してしまうんです。
「のだめカンタービレ」のコントラバス奏者《佐久 桜》のパパみたいに、バイオリンが大好きなあまりに、弾きたいのに、バイオリンの銘器を集めるだけで終わってしまう…。
うーん、ちょっと違うなぁ。
とにかく、あなたに大切な格言を贈ります。
一冊の本からどれだけ学べるかに価値がある
私の転機となったのは、
「半年間、16小節のメロディーだけをひたすら繰り返した」
ということにあります。
ある交響曲に、バイオリン・ソロの箇所がありました。
時間にして、わずか十数秒でしょう。
そんなわずかな時間のために、血を吐くような思いをしながら、毎日そのソロ部分を繰り返し練習しました。どれだけやっても満足できませんでした。前日になっても、エキストラの人に「どうやって演奏すればいいですか?」と聞いて回っていました。自分を見失っていた、と言えるくらいだったかもしれません。
あの探求でつかんだのは、自分の音を聴くということ。
自分のなかに響いている音に耳を傾ける、ということ。
本当にやりたいことは、なんなのか。
たった一つの教材であっても、そこから学ぶことは無限にあるんです。
「あれもこれも」と欲張ったところで、大切な原理というものは、かえってあなたから遠ざかってしまいます。
一つの課題に対して、うんざりするほど向き合っていただきたい。
レッスンしてくれる先生がいるなら
「そんなにやったの?!じゃあもういいから、次はこれやってね。」
と言われるくらいに、とことん一つの課題をやり抜いてほしい。
かならず、脱皮できます。跳躍できます。
レベルアップは、突然やってきます。
あるとき突然、自分の音がクリアに、ありのままに聞こえてくるようになります。