アレクサンダーテクニークのレッスンに僕が何を持ち込んだか、ということ

ヴァイオリニストのためのアレクサンダー・テクニーク覚え書き

美容師とお客様のイメージ写真

 アレクサンダーテクニーク教師とヴァイオリニストのレッスンは、美容師さんとお客さんの関係に似ています。美容師さんとの楽しい時間は、この一言から始まります…… 「今日は、どんな感じにしますか?」

 思えば、僕のレッスンはいつも先生任せでした。

ヴァイオリンだと……
M先生「今日は、何を見たらいいの?」
僕「何をやればいいかわからないので来ました」

アレクサンダーテクニークだと
J先生「何をやりたいの?」
僕「よくわかんないけど、ヴァイオリンをひきます」

でも、それでいいんですよねー。

「今日はどうします?」

 アレクサンダーテクニークのレッスンでは、生徒さんが悩みや望みを持ち込んできます。それは本当にさまざまです。僕が参加したグループレッスンで見たことがあるのは、例えば……

「よくわかんないけど、ヴァイオリンひきます」
「椅子に座ってひくと落ち着かない」
「指揮者とうまく合わない」
「演奏中に肩が痛い」
「音がかすれる」
「このパッセージがうまくいかない」
「留学しようか迷っている」
「ヴァイオリンの先生を変えようと思う」
「楽器やる気が起きない」

……などなど。時には、ヴァイオリンの先生にはいえないような、ヴァイオリンとは関係なさそうな悩みだったり、逆にヴァイオリンについてのものすごく深刻な悩みを持ってきているのを見たことがあります。

 それに対して、ひとつひとつ解きほぐしながら「本当は、こっちが問題かも知れない」とか「それをやるためなら、このやり方もあるよ。どっちが好き?」みたいに提案してくれます。

「うーん、任せます!」

 でも、「なんにもわかんない。でも、もっとうまくいく方法を知りたい」あるいは「よくわかんないけど、なにかアドバイスある?」みたいなリクエストもあるわけです。僕がレッスンしてもらった時でもそういう事がほとんどです。もしかしたら、何かを準備していった時よりも、何も考えずただ「演奏するんで、見ててもらえますか?」というときのほうが、どえらい学びの深さになったりするんです。これ不思議。

「じゃあ、こういうのはどうですか?」

 美容師さんは「この写真みたいにしてほしい」「爽やかな感じで」「顔が小さく見えるように」「友達の披露宴に行くんで」など私たちの一言を手がかりにして、いくつかの提案をしてくれます。そして、私たちはその中から気に入ったものを選ぶことができます。もちろん「ここは5センチ切って、ここからここまでは今のまま、あとは好きにして」というオーダーも受けてくれます。

 「だったら、レッスン前にアンケートとか『今日はどんなことを探求しますか?』なんて聞かなきゃいいじゃん」と思っちゃいますよね。じつは、これ大事なんです。思い浮かんでも、思い浮かばなくても、それは別にいいんです。

実は、そこへ足を運ぼうと思ったことが、もう変化の始まりです

 大事なのは、問題があろうがなかろうがヴァイオリンをひきたいか、ひきたくないか……なのですから。

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