うれしはずかし初体験~Olivの巻(2)

Oliv(オリーブ)二日目。
Oliv(オリーブ)はPirastro社のガット弦。
Oliv(オリーブ)は定番の弦。
ガットは天然素材ゆえ、製造からお手入れにいたるまで手間がかかる。気をつかう。
合成素材がもつ、圧倒的なタフネスとは無縁。
この合成素材全盛の時代に、あえてガット弦。
―――そのコダワリは、高校野球で木製バットにこだわった山田太郎(ドカベン)にも似て―――
ガットは、デリケート。
ガットがデリケートなのは、なぜだろう?
朝から雨が降ったり止んだり。
湿気の変動におびえている自分が可笑しい。
「せっかく張ったオリーブが切れていたらどうしよう」
こんな心配をするとは、いままでの自分にはありえない。
天候や空調の具合を過敏なまでに気にする先輩方を、心のどこかで軽蔑していた私だからだ。
「雨降ったって、湿度は変わらんでしょう」
……てなことで。
無頓着だったのだね。
楽器ケースを開けるまでに、あれこれ考える。
(エアコンの効いた部屋に持ってきたから、なじむまではケースを開けずにおこう)
(そろそろ、馴染んだかな。あけてもいいかな)
ああ、なんて繊細な、細やかな配慮でしょうか。
私のなかに、こんな感性が宿っていたとは。
柄にもなく、シェイクスピアなんか読んでみたからでしょうか。
ともあれ、楽器ケースを開けて、無事を確かめずにはいられないという気持ちが溢れてきます。
お金はある
時間もある
だけど、いまひとつ楽器ケースを開ける気にならない
……という贅沢な悩みをお持ちの方には、ガット弦の使用をおすすめします。
楽器に触れ合うのが、いとおしくなりますよ。
ところで、さっきのお題。
ガットがデリケートなのは、腸だからだね。
上司の顔色を気にして、おなかの痛くなったあの頃が懐かしいです。

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