まな板の上のバイオリン弾き~ロックバンドのレコーディングに参加してきたよ!

先日、縁あって、若いロックバンドに招かれてレコーディングに参加してきました。学生時代に、オーケストラでスタジオに入った時以来ではないかなぁ。

今回は、ドラムス・ギター・ベースに、ヴォーカルという編成のバンドへの参加です。バイオリンの他に、チェロもひとり参加してくれました。

録音ブースは、ドラムセットが収まるくらいの広さです。そこへ、バイオリンを持って入ります。僕が座ったら、エンジニアさんからヘッドフォンを渡されました。このヘッドフォンから流れてくる音に合わせて、演奏をするんですね。このヘッドフォンは、別フロアのコントロールルームからの指示なんかも聞えてくるようになってます。マイクの位置合わせが済んだら、エンジニアさんは出ていってしまいました。

まな板の上のバイオリン弾き……

録音ブースのゴツイ防音扉が閉じられてひとり残されました。ぽつーん……。

最初はレベル調整。バイオリンから出る音の大きさにあわせて、あれこれと調整をします。録音のためだけでなく、《ヘッドフォンから流れてくる音》と《自分が演奏してる音》との聞こえ具合を変えるってこともやります。自分の音ばかり聞こえて、バンドの他のパートが聞こえないようだと「本当にこの音量で演奏してていいのかな?」ということが分かりにくくなるのですね。

録音の合間には、ヘッドフォンから、エンジニアさんやバンドメンバーの声が流れこんできます。この建物の構造上、録音ブースに窓はありません。調整室と録音ブースをつなぐのはヘッドフォンとマイクでのやりとりだけ。どんどん、耳が研ぎ澄まされていくのがわかります。ヘッドフォンの向こうに、自分の出す音全てに聞き耳を立てている人がいる……すげー重圧。

ライブとは違った楽しみ~録音という芸術

今回は、アルバム制作でした。自分の音が録音されてCDとして残る、という得体のしれないプレッシャーが高まっていきました。自分の出した音が、マイクを通してパソコンのディスクに収録されていく……。リハーサルと音採りを重ねながら、ちょっとずつ自分がすり減っていくような感覚に陥りました……いったい、なんのためにこんな録音をしているんだろう?

休憩して、打合せをしているときに、バンドメンバーが今回の録音、いま僕が録音している楽曲への思いを打ち明けてくれました。「理想郷は、他のどこでもなく、いまここに、自分のなかにある」――そういう歌なんです、と。

将来、どんな人がこの歌を聞いてくれるんだろうか。いつ、どんなときに、どんな思いをもってこの曲を耳にするんだろう……。いま、このスタジオにいる全員が、《その時》を思いながら僕の音を待ち望んでくれているんだなぁと思ったら、楽しくなってきました。

音そのものを思うだけではなく、誰に届けたいのか、誰と作っているのか……ということを思ったときに音の世界が豊かに広がってあふれ出てくるような思いがしました。いっぽうで、僕個人の技術には多くの課題があることをあらためて自覚しました。もっとうまくなろう!ってことで、また練習しています。

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