父のひげそり。

今日は、手足を動かす体操もしたのだ。
父よ、あなたは偉い。
父が「ひげをそる」と、洗面所に向かった。


が、やはり立ちあがれない。
力尽きて這いつくばっている。
他人には見せたくない父の姿。
父も私にこんなところを見せたくはなかろう。
しかし、この屈辱を立ち上がる力に変えればいい。
とはいえ、まだまだ炎症が引かないのだろう、上体を起こすと痛いと声を上げる。
痛みを訴える声は、私たち家族にとっても苦痛である。
ついつい手を貸してしまいそうになるところを、ぐっとこらえることも必要だ。
伏臥(うつぶせ)から長座位(足を前方に投げ出して座る姿勢)をとってもらい、私がひげを剃った。
この3連休の間は、這うこともできないくらいであった。
昨日ようやくベッドから降りることができるようになり、それでも自力ではベッドに戻れなかった。
今日はベッドに這い上がれるようになった。
いま、また寝息を立てている。
静かな夕暮れだ。

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