思い出のアルバム(1)~十字軍、そして、バッハ

誰でも、演奏した曲にまつわる思い出をもっていると思います。
とりわけ、人前で初めて演奏した曲というものには、いろいろな思い出があることでしょう。
私もそのひとりです。人前で演奏したのは、聴かせるために演奏したのは、オーケストラのステージでした。
●初体験は、15歳……
高校生のとき。7月ころに楽器の持ち方から始めて、3月の学年末にはオーケストラで曲をやったんですね。たしか、スコアを切り張りしたパート譜で、ただでさえ弾けないのに、読みにくくて苦労した覚えがあります。
そのときの曲が、グリーグ作曲「シグール・ヨルサルファル」(劇音楽「十字軍の兵士シグール」)です。あまり有名ではないのかな?「ペール・ギュント」組曲なんかとカップリングされていることが多いみたいです→こんな感じ

●そんなに近くで見ないで!?
初めての演奏として、忘れられないのがもうひとつあるんです。楽器をはじめてから、ちょうど一年が過ぎたころだったでしょうか。ソロ演奏をやりました。地域の高校生が集う会合を主催したんです。集まったのは、私を含めてわずか3人……。
「えー、それでは、…えーっと。バイオリンを弾き、ます…(ごにょごにょ)」てな具合だったと思うんですけども、弾きはじめたんですね。ラジカセも何もなしの、無伴奏。聴いてる人は、至近距離でうつむいちゃって。
「気まずいなぁ……」と思いながらの演奏がうまくいくわけもなく、何回もストップ。「こんなはずでは……」と焦るほどに、指がもつれて、いやな汗が流れるのね。
どうやって曲の最後までたどり着いたのか、覚えてませんけども、途中で投げ出さずに弾いちゃったんですね、きっと。
うまく弾けなかったことが悔しくて悔しくて。
忙しい時間を割いて来てくれた人に、演奏で応えられなかった。
その無念さといいますか、とにかく、悔しい思いを支えに練習するようになったんです。
で、そのときの曲が、習い始めのころに必ずやる曲のひとつ、バッハ作曲のメヌエット。『アンナ・マグダレーナ・バッハのための音楽帳~メヌエット』っていうんですね。僕の持っていた楽譜には『メヌエット バッハ作曲』としか書いていなかったんですけども。
で、最近、そのメヌエットに再会しました。チェンバロでの演奏を生で聴くことができたんです。チェンバロの音は、ピアノとずいぶん違うんです。チェンバロは迫力に欠けるけれど、細い糸で織られた織物のような優雅さが響くんです。弦をつま弾いているからでしょうか。
チェンバロが奏でるメヌエットに包まれたとき、「ああ、音楽には初心者向けのものなんてないんだ」って気がついたんです。
▼チェンバロ演奏による「メヌエット」を収録したアルバム
シャコンヌ
シャコンヌ
オムニバス(クラシック)

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