【バイオリン演奏・超入門】弓を狙い通りに走らせるために知っておいて欲しい《弓と弦の角度》のこと

Violin上達しよう

スタジオ室内でヴァイオリンを演奏する・いちろーたの写真

 今回は、ヴァイオリン演奏をするときの弓の動かし方の話です。前回は駒からの距離を使い分ける話でした。今回は、それを使い分けるために知っておいたほうがよいことを考えていきます。

 この《ヴァイオリン演奏・超入門》シリーズでは、当たり前すぎて市販の教則本に書かれていないことや、じつは書いてあっても読んだ人がその大事さに気づかないままでいることが多いことを取りあげていきます。

前回のおさらい…

 ボウイングの基本中の基本を、ひとことで言うと「一番おいしい《駒から2センチ》をマスターしよう」ではないかと思います。私が教わったなかで、最初に覚えたことでしたし、そしていまでも問題があるとまず思い直すのはこのことなのです。カナメ先生が授けてくれた極意中の極意です。

 >>前回の記事……駒からの距離(前編)はこちら

おいしい場所で弓を走らせるために、何をしたらいいか?

 ヴァイオリンの一番おいしい音を簡単に取り出せる《駒から2センチ》をやりつづけるために、どうしたらよいのでしょうか。

 それは《弓の毛を弦と直角に交差させよう》と考えるといいです。別の言い方をすると《弓の毛を動かす方向を、駒と平行になるように動かそう》ということです。

実験!弓を迷走させてみましょう

 注意1:この実験では、ヴァイオリンを時計の文字盤に例えてみます弓の毛と弦が触れ合っている点が、文字盤の中心点です。その中心点から見て渦巻きのある方が12時の方向、中心点からあご当てやエンドピンのある方が6時の方向……というお約束にして説明をしていきます。

 注意2:この実験では、弓元で演奏するときも、弓先で演奏するときも、弓の向きが同じ時間を指しつづけるように、弓を動かすチカラ加減を調節してください。弓の毛と弦の触れ合っているところが、時計の文字盤の中心点です。

実験1、ダウンで駒から遠ざかり・アップで近づく

 弓を構えて、弓元の毛を弦にのせます。時計の針に例えると、弓先がだいたい9時を向けるよう教わっていることと思います。いまは実験のために、この9時の方向を指している弓先を、10時から11時くらいの間を指すように向きを変えてみましょう。

 これで開放弦の演奏を数回ダウン・アップと往復させて、音を作ってみましょう。どんなことがわかりますか?弓が手の動きに逆らっているような感じがした人もいるかも知れません。

実験2、ダウンで駒へ近づき・アップで遠ざかる

 さて、さっきの実験はちょっと奇妙な体験だったかもしれませんが、もうひとつ実験をしてみましょう。

 弓を構えて、弓元の毛を弦にのせます。今度は実験のために、普段は9時の方向を指している弓先を、8時から7時くらいの間を指すように向きを変えてみましょう。

 これで開放弦の演奏を数回ダウン・アップと往復させて、音を作ってみましょう。弓がどう走りたがっているか、さっきの実験との違いはどんなことがあるでしょうか。

 弓を動かそうとする手や腕の動きに対して、弓から伝わってくる力の具合もあるでしょうし、出てくる音の変化も音量や音色など、いくつもの変化が発見できるのではないでしょうか。

実験3、遠ざかりもせず・近づきもしない

 さて、好奇心旺盛な方はここを読むまでに、もうすっかりボウイングのいろいろなことを先回りして実験済みかもしれないですが、私は説明を続けようと思います。

 今度は、弓の毛と弦が直角に交差するように、弦の上に弓の毛を置いて、動かします。弓先は中心点から見て常に9時の方向を示すように、動かすチカラ加減を調整します。

弓はまっすぐ走りたがっている?!

 ていねいに、こまかくチカラ加減を変えて実験をした人は、もうお気づきかと思いますが、弓は動かすと直角になりがたるものなんです。もしも、まっすぐに動きたがっている弓の力を感じられなかったのなら、もう一度、上に書いた実験1と実験2で遊んでみてくださいね。

衝撃の事実……ボウイングの邪魔をしていたのは自分自身の動かし方だった!

 私自身が、こうした実験で遊んでいて驚いたのは、

弓はまっすぐに動きたがる!

なのに、

自分が弓の動きを曲げている!

ということに気づいたのでした。

ボウイングは全身で動きを助けあおう

 弓の動きを身体が邪魔しているときには、使っていない関節があります。あるいは、動かしてはいけないと思い込んで固定してしまっている関節があります。

 固めてしまいがちな場所は、

胴体に近い方からいうと……
頭と首のつなぎめ、首の前や後ろから右と左の肩のあたりまで、鎖骨と胸のあたり、肩甲骨と背中のあたり、おなか(おへその上や下から、大事なところ、お尻の穴のあたりまで)
腕の目立つところでいうと……
肩の周りとか脇のあたり、肘や手首、手のひらや指(特に小指や親指)
完璧に忘れられがちなところ……
目やまぶた・眉など頭の上半分、くちびるや歯・あごなど
あっ、ここもあった!
おしりや腰・太ももの付け根の奥というか体の内側のほう(座っててヒザを持ち上げると、お尻や腰とは別に動くあたり)、ひざ・足首・足の指

ちょっと深入りしてしまいましたが、ボウイングがうまくいっていないときには「《動かせる》ってことを忘れている場所はどこかな?」と、上のリストを使ってひとつずつ思い出してみるのをおすすめします。

 思っていたよりも長い記事になってしまいました。予定していた駒からの距離の残り3種類は、また次回に持ち越しとさせてもらってもよいでしょうか。

 では、また次回に!

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